Windows Phone 7にもフル機能のIE9を提供
いずれはIE10も
CSS3に関するそのほかの改良についても、簡単に触れておこう。「CSS3 Transitions」では、CSS3を使ってグラフィックやビデオをアニメーションさせる機能だ。CSS3 TransitionsはGPUアクセラレーションが使用されるので、複雑なアニメーションでも高速に表示できる。また「CSS3 3D Transforms」は、平面に描画したグラフィックやビデオを、3Dに変形する機能である。この機能もGPUアクセラレーションが使われる予定だ。
「CSS3 Transitions」と「CSS3 3D Transforms」を組み合わせたデモ。写真のビデオ映像は3Dの壁面に表示されており、向きを変えられるほか、クリックするとガラスが割れるようなアニメーションが表示される(赤枠部)
さらにIE10PP1では、JavaScriptからあいまいさを排除したスクリプト言語「ECMAScript 5 Strict Mode」がサポートされる。JavaScriptと言えば、各ウェブブラウザー間で互換性に問題があったが、ECMAScript 5 Strict Modeをサポートしているウェブブラウザーでは、完全な互換性を保てることになる。
開発者から見ると、今まではJavaScriptでプログラミングする際に、ウェブブラウザーごとの挙動の違いを意識する必要があった。しかしECMAScript 5 Strict Modeなら、ひとつのコードを書くだけで互換性のあるサービスを開発できる。なお、Firefox 4.0はいち早くECMAScript 5 Strict Modeをサポートしている。
IE10PP1での機能追加は以上のとおりである。一方でIE10自体は、2012年3月に最終版が公開される予定のHTML5規格を、すべてサポートする予定だ。CSS3などのレイアウト関連以外では、以下の機能がIE10で実装される予定となっている。ちなみにこれらの機能は、マイクロソフトの「HTML5 Labs」で先行開発されている。
- IndexDB
- ウェブブラウザーからパソコン内にインストールされたデータベースにアクセスするAPI
- File API
- ウェブブラウザーからパソコン内のファイルにアクセスするAPI
- Web Sockets
- ひとつのHTTP接続で細かなデータを双方向で通信するAPI
- Media Capture API
- パソコンに接続されているカメラやマイクなどのデバイスからの入力を取り込むAPI
スマートフォン向けOSの「Windows Phone 7」(以下WP7)に関する話題では、2011年後半のアップデートでIE9のフルセット版を提供すると発表された。2012年以降には、IE10自体もWindows Phoneでサポートされるだろう。
9月のイベントでWindows 8の詳細が明らかに?
IEと言えば、かつては独自仕様のオンパレードで批判されたものだ。しかし現在のマイクロソフトでは、IEをW3Cが提唱するHTML5規格を完全にサポートして、なおかつHTMLレンダリングやJavaScriptの性能を向上した最強のウェブブラウザーにする方向で進んでいる。実際IE9も、Windows用ウェブブラウザーでは最もGPUアクセラレーションを活用しているし、CPUのマルチコア化に対応したJavaScriptエンジンの開発も、今後とも進めていくという。
IE10PP1がこの時期に発表されたのは、MIX11というイベントの事情もあるが、マイクロソフトが次期Windows「Windows 8」で、IE10を標準搭載しようと考えているという理由もある。MIXの基調講演には、Windows OSを開発するWindows&Windows Live事業部担当副社長のスティーブン・シノフスキー(Steven Sinofsky)氏が登壇。Windows 8のプロトタイプをインストールしたASUSTeKのARM CPU搭載のノートを紹介するという一幕もあった。
ちなみにマイクロソフトでは、9月13日から4日間、米国アナハイムで開発者向けイベントを開催する予定だ。このイベントでは、Windows 8の詳細やARM版Windowsなどの情報も公にされるだろう。
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