林信行氏
iPhoneが発売された7月11日から、もうすぐ1ヵ月が経とうとしている。5日にはソフトバンクが2009年3月期第1四半期の決算説明会を行ない、iPhoneについて月額利用料金の値下げが発表された(関連記事)。
発売前後であれこれと話題を振りまいてきたソフトバンクモバイルとiPhoneだが、その評価はどうだろうか? アップルとケータイ業界に詳しいジャーナリストの林信行氏に話を聞いた。前編では、ソフトバンクモバイルと日本のケータイ業界についての話題をまとめていこう。
過去のiPhone記事
・iPhoneは大きな森を生み出す「最初の木」(前編、中編、後編)
・なぜiPhoneは人々を熱狂させるのか?(前編、中編、後編)
・林信行に聞く「ソフトバンク、iPhone発売」(記事)
孫氏は最高のiPhoneプレゼンテーター!?
── 今になって、iPhoneの月額利用料を変更してきたことについてどう考えますか?
林 慎重でいいと思います。もしiPhoneが爆発的に売れてしまって、購入者が全員Wi-Fiを使わずに、3Gで通信しまくるタイプだったら、ネットにつながらないケースが増えてユーザーもソフトバンクも困ることになってしまう。
ある程度、ハードルを上げることで購入者増えすぎないように初速をコントロールしたのでしょう。今回の新料金プランのように、これからひと段落つくたびにソフトバンクやアップルが少しずつ何か仕掛けてきそうで面白いです。
── 5日の決算報告についてはいかがでしたか?
林 印象に残ったのは孫さんのプレゼンですね。
最初、孫さんがものすごく陰鬱そうな顔をしてうつむいているので、何か悪い発表があるんじゃないかと不安でした。しかし、その後、iPhoneの話になると、それまでと打って変わって表情が明るくなって話が止まらない。
演出だったのかどうかは分からないけれど、孫さんは日本ではiPhoneの最高のプレゼンターかもしれないと感じました。あの決算報告を見たら「ソフトバンクがiPhoneを獲得してくれてよかった」と言わざるを得ない。
デモにしても、壇上に上がったすべての人の中で、孫さんが一番目か二番目にiPhoneを使いこなしている感じが伝わってきました。ほかのプレゼンターに「そこはリスト表示も見せた方がいい」と指示して、分からないでまごついていると、横から割り込んできて自分で操作してしまう。
メーカーの社長でも、自社の製品の操作はもちろん、名前すら知らないことがあるような情けない人もいますが、孫さんはさすがだという鮮烈な印象を植え付けられました。
── iPhoneの発売日も、孫さんは直営店や大型量販店を駆け回ってPRしていましたね(関連記事)。
林 アップルという会社の顔がスティーブ・ジョブズというのと同じで、ソフトバンクの顔はやはり孫さんなんでしょう。
iPhoneの発売日前、ソフトバンクショップの表参道店にできた行列を孫さんが見にきたときも、並んだ一人一人と握手を始めてしまい、近くにいた側近も止めるに止められず、列の最後尾まで行ってしまった(関連記事)。これも本当にスゴいと感じます。
今後、ほかにもiPhoneを発売するケータイ事業者は出てくるかもしれないけれど、ソフトバンクのようにちゃんと製品を理解して、真心を持って製品を売れるかというと、難しいかもしれません。