「感想戦 3月11日のマーラー」
【放送予定】3月10日(月) [総合] 午後10:00
〈再放送〉3月21日(金)[総合]午前1:10~1:55 ※20日(木・祝)深夜
14年前の地震の夜、東京墨田区に拠点を置く、新日本フィルの定期演奏会は決行されました。
観客105人の前で演奏されたのは、マーラー「交響曲第5番」。悲しみ、祈りが込められた演奏は、奇跡の名演と呼ばれます。
将棋や囲碁の対局後に行われる「感想戦」のスタイルで、当日会場にいた指揮者・演奏者・観客の証言をつむぎ、奇跡の夜の出来事を振り返ります。
制作を担当した寺園慎一プロデューサーに、番組の見どころや取材の裏話を聞きました。
◆記憶に刻まれた出来事を語り合う …
──今回どのような狙いでこの番組を制作することになったのですか?
番組は、東日本大震災から1年後の2012年に放送した番組のリメイクです。当時は深夜の放送でしたし、実は一度も再放送をされていません。番組をごらんになった方は限られています。ぜひあの日の夜に行われたこのコンサートのことをひとりでも多くの人に知っていただきたいと考えました。
3月11日のあの夜行われたコンサートには、94人の演奏者と105人の観客がいました。全員ではないのですが、その当事者の証言を集めることで、将棋や囲碁の対局後に行われている「感想戦」のように、そのときの思考や行動を振り返ることができるのではと考え、追加取材もしながらリメイクを進めていきました。
◆さまざまな思いを抱える証言者たち
──コンサートの感想戦(証言)をしてくださった方々について教えてください。
取材を受けてくださったのは、あの日会場にいた指揮者、演奏者、運営、そして観客の方々です。演奏者の中には、仙台出身の人、父親の実家が三陸の岩手県大槌町(おおつちちょう)にある人もいて、当日の様子や気持ちを語ってくださいました。中には演奏をすることに迷いがあったと話す人もいて、さまざまな思いが伺えます。
当日、1800人の観客で満席になるはずだったホールに集まったのは105人。その中から数名を探し出し、お話を聞くことができました。皆さんの証言とともに、あの日の夜の東京の空気感もお伝えできるのではと思っています。
追加取材は今年行ったのですが、やはりあの日のことは深く記憶に刻まれているのだと感じました。指揮者、ダニエル・ハーディングは、マーラーの交響曲第5番を指揮するたびにあの日のことを思い出すと語ってくれました。
また、父親の実家が岩手県大槌町だというホルン奏者は、あの夜の演奏を機に定まった、新たな道を聞かせてくれました。さらには、あの大変な夜にコンサートに行ったことを、いまだに後ろめたく感じていると語る女性にもお話が聞けました。
◆自分だったらどうしただろう…
──視聴者の皆さんにメッセージをお願いします。
たくさんの証言を集めてみると、パニックになる気持ちを押しとどめて、ある時間の中で人々はどんなことを考えてどんな行動をしたのかが見えてきました。あの日を思い出しながら、自分だったらどうしただろうなど考えながら見ていただくのもいいかもしれません。
今回は、オーケストラ事務局のカメラが当時の映像を記録していたことで、より鮮明にあの日の様子を伝えられると思っています。
記録映像を見ながら感想を聞いたり語れたりするのは、膨大な映像アーカイブを保有しているNHKならではの醍醐味(だいごみ)だと思うので、今後も震災の日に限らず、いろいろな人たちの語りたい瞬間や出来事から、また新たな「感想戦」を制作することを目指しています。
「感想戦 3月11日のマーラー」
【放送予定】3月10日(月) [総合] 午後10:00
〈再放送〉3月21日(金)[総合]午前1:10~1:55 ※20日(木・祝)深夜
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