質問6-2
宇宙の果てはどうなっているの?
「宇宙の果てに近い、たいへん遠い天体が見つかった」というようなニュースを目にすることがあります。「宇宙の果て」という言葉から考えて、「そこまでいくと、そこから先には宇宙がなくなってしまうような境目」と思ってしまうかもしれません。しかし、そうではありません。
まず、遠くを見るとはどういうことなのかを考えてみましょう。 ある天体が地球にいる私達に見えるということは、その天体が発した光が地球に届いたということです。光の速さは秒速約30万キロメートルととても速いのですが、多くの天体はとても遠くにありますので、光は何年もかかって私達のところまで届きます。たとえば、1万光年離れた天体を考えると、1万年前に天体を出た光が、1万年の間宇宙空間を飛び続けて、今やっと地球に届いたのです。つまり、今私達が見ている天体の姿は、その天体の1万年前の姿だというわけです。
私達のこの宇宙は、138億年前に誕生したと考えられています。するともし、120億光年彼方に見える天体(「天体A」としましょう)を観測したとすると、それは120億年前にその天体を出た光を今受け取ったということになり、宇宙が誕生してからわずか18億年しか経過していない、宇宙の初期の頃の天体の姿を見ていることになります。
それよりさらに遠くを見ようとするとどうなるでしょう。宇宙が誕生したのが138億年前ですので、138億光年より遠いところを見ようとしても、そこには天体はおろか宇宙そのものがなかったのですから、なにも見えるはずがありません。そのような意味では、どの方向を見ても、138億光年の距離が「宇宙の果て」だといえます。
ではもし、天体Aに人間のような宇宙人が住んでいたとしたらどうなるでしょう。その宇宙人が、誕生から138億年経過した宇宙を観測すると、地球で観測したのと同じように、どの方向を見ても138億光年先までを見ることができるだろうと考えられています。「天体Aから、地球とは反対の方向を見たときに、18億光年より先には何も見ることができない」ということはありません。(ただし、そこからの光はまだ地球には届いていませんので、私たちは、その先も本当に、私たちが見ているのと同じような宇宙がずっと続いているのかどうかは、確認することができません。)
さらに詳しく知りたい方は、「宇宙図」 をご覧ください。
(補足)距離の定義について
10億光年を大きく超える距離の場合、距離をどう定義するかについていくつかの考え方があります。光が天体を出てから私たちに届くまでに途中の空間が膨張するため、身近で使っている距離の考え方をそのまま当てはめることが難しいからです。
このページで使っているのは、「光行距離」(「光路距離」とも)という考え方です。天体から出た光は、宇宙空間を進み、ある時間をかけて私たちのところに届きます。「光行距離」とは、光が天体を出てから私たちに届くまでにかかった時間に光の速さを掛けた長さを、その天体までの距離とみなしたものです。例えば、その天体を出た光が120億年かかって私たちに届いたとき、その天体までの距離を「120億光年」と表します。「光行距離」は、新聞記事など多くの文章で使われています。
他方、文章によっては「宇宙の果てまでの距離は450億光年」のように、138億光年とは大きく異なった値が書かれていることがあります。その場合の「距離」は「光行距離」ではなく、「固有距離」や「共動距離」など別の考え方による値だと考えられます。