「コンブ漁師にとって、ウニは本当に邪魔者ですよ」
函館市と2004年に合併した旧戸井町を取材していたとき、地域では特産品であるコンブを食べてしまうウニのことを厄介者扱いしていました。
キタムラサキウニは道南から日本海沿岸の海域に多く生息しています。コンブ漁業者にとって厄介者であっても、やっぱりウニはウニ。新たな資源として活用するために、北海道の各地でウニ養殖の研究が進んでいます。
■単価の高いはずのウニ、なぜ漁業者は嫌うの?
北海道のキタムラサキウニの漁獲量を調べてみました。最近は年300トン強で推移しており、比較的漁獲量の変動は少ないといえそうです。
北海道水産現勢の2021年のデータによると、同年の漁獲量は332トンでした。市町村別では函館市が最も多く、59トンに達しています。ウニと言えば高級食材の印象が真っ先に浮かびます。ただ、現場である函館市に話を聞くと、数字からはうかがい知れないウニを巡る現実がありました。
函館市を含む道南地域の沿岸ではウニが大量に繁殖することで、コンブなどの海藻が食い荒らされてしまう「磯焼け」が深刻な問題になっています。
一般的にはコンブより価値が高いとみられるウニが捕れるのだったら、それでもいいのではと感じられるかもしれません。ただ、大量繁殖したウニは高級食材としての価値をほとんど持ちません。ウニは昆布の芽まで食べてしまい、磯焼けが起こるほどに食い尽くしてしまっても、ウニの腹はなお満たされることはありません。地元に残るのはやせて身入りが少なく、品質の悪いウニだけ。コンブを根こそぎ失うことで、漁業者の生活の糧が失われてしまいます。
そこで、函館市では大量繁殖するウニが藻場を食い荒らす前に捕獲。養殖して太らせてから、出荷することを検討しています。
魚類の養殖の手法などを調査、審議する函館市魚類等養殖推進協議会では、2023年度中にも成育不良のウニを育てる実証実験を始めたいとしています。協議会では価格高騰が見込める冬場に合わせた出荷を目指す方針です。地元としては、磯焼けを防ぎながら、ウニも資源化できるため、養殖事業は「一石二鳥」というわけです。
函館市は「まだ検討段階ではありますが、磯焼けはコンブ漁師にとって喫緊の課題です。ウニ養殖が軌道に乗れば、漁師の収入増にもつながります」と期待していました。
北海道の多くの地域でウニは漁獲されていますが、天然のキタムラサキウニの旬は夏場です。養殖ウニであれば供給が少なくなる冬場に出荷できることが強みになります。
厄介者のキタムラサキウニを育て、端境期の出荷を狙う養殖。古宇郡漁協(後志管内泊村、神恵内村)の神恵内ウニ養殖部会では、規格外の野菜をウニのエサに使う取り組みで、注目を集めています。
■海の厄介者、野菜でおいしく
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