長時間勤務を続ける教員が依然として多く、働き方改革に対する自治体や学校による取り組みの差があることから、文科省は2月3日、2020年に給特法に基づく指針で示した「公立学校の教師の勤務時間の上限」がいまだに条例や規則に反映されていない自治体に対し、23年度中に反映することを求めるとともに、反映されない場合には自治体名を公表する考えを都道府県と政令市の教育長に宛てて通知した。指針が定める在校等時間を把握し、教職員の勤務時間管理を徹底するよう強く求めている。
教員の時間外勤務については、給特法に基づく「公立学校の教師の勤務時間の上限に関する指針」によって、「1カ月の時間外勤務は45時間以内」「1年間の時間外勤務は360時間以内」とする上限が定められている。こうした教員の勤務時間の上限について、文科省は自治体の条例や規則に反映するよう20年に告示で求めているが、今回の通知によると、条例の整備については都道府県の10.6%(5自治体)、規則の整備については都道府県の2.1%(1自治体)、市区町村の21.9%(379自治体)が「対応を検討中」としたままで、条例や規則に反映される見通しが立っていない。
このため、通知では、遅くとも23年度中に条例や規則への反映が行われるよう「可及的速やかに対応を図ること」を求めた。未反映の教育委員会の状況については「今後も随時フォローアップを行うとともに、未反映の教育委員会名を公表することもあり得るので、ご承知おき願いたい」と、早急な対応を強く求めた。
また、教職員の勤務時間管理を徹底するため、「公立学校の教師の勤務時間の上限に関する指針」が定める在校等時間の管理を改めて求めた。指針では、教員の勤務時間について、自主的・自発的な勤務も含めた在校時間と、研修や児童生徒の引率など校外での勤務も合わせて「在校等時間」として把握することを定めている。この「在校等時間」から所定の勤務時間を差し引いた時間が教職員の時間外勤務とされている。
通知では、学校の働き方改革の取り組み状況について、都道府県と政令市の教委が原則として自らのホームページなどで公表することも求めているほか、ICTを活用した校務の効率化によって教職員や保護者の負担軽減を図ることも改めて求めた。
文科省は22年12月23日、全国の教育委員会に行った学校の働き方改革を巡る取り組み状況の調査結果を公表している。それによると、時間外勤務が「月45時間以下」となっている割合を4月から7月までの平均でみると、小学校は19年の51.5%から22年の63.2%に、中学校は同じく36.1%から46.3%に、高校は同じく53.5%から63.4%に改善した。しかし21年と22年を比べると、改善幅は小学校で1.9ポイント、中学校で1.8ポイントと小幅の改善にとどまり、高校ではマイナス0.4ポイントと悪化した。学校行事や部活動などによって教職員の時間外勤務がなかなか減らないという、業務改善の「壁」もうかがえる調査結果となった。過労死ラインの目安とされる月80時間を超える時間外勤務を行っている教職員は、22年4~7月の平均で小学校4.4%、中学校13.7%、高校10.3%となっており、依然として多いことも確認された。