プレイヤーは要するに神様だ。生命体は与えられた状況を学習し、エサを配置すると勝手に食べて成長。たとえばいきなり水で満たした場合、最初はもぞもぞしているだけなのに、時間経過に応じて適応し、魚のように泳ぐようになる。そして世代を経るごとに環境に応じた進化を遂げていく。
地形や気候、重力、水分量といった惑星の環境を変え、生命体たちの行く末を見守るのがプレイヤーの役割なのだが、生命体への接し方は自由だ。徐々にアンロックされていくスキルにはプレイスタイルや趣味嗜好が反映される。
生命体に優しく接すると惑星を大きくしたり自動給餌器を設置するスキルを使えるように。逆に殺しまると隕石を落としたり炎で燃やしたり、過酷な状況に追い込みやすくなる。ひどい神様である。
あらゆる動物は生きるために過酷な環境に適応し、最適化された動きをするものだ。では、最適化しなくても生きられたらどうなるのか。それアニメかマンガで悪の科学者がやるやつだろう。
開発者はなぜ本作を作ったのか。きっかけは1990年代にカール・シムズが行った人工生命の研究だという。仮想空間の中で、エサを取れた個体が生き残って取れなかったら死んでいく自然淘汰と学習の仕組みを入れたら、魚みたいな何かが生まれた。細かいプログラムを設定していないのに、コンピューターが地球と同じように機能している。
この結果に衝撃を受け、もしかしたら地球じゃなくても生命は存在し得るのではというSFチックな魅力にハマってしまった。自分でもプログラムを組むようになり、「かわいいんですよね。10何年も作ってますけど、動いてる姿はいつ見てもホッとします」と笑う。
『ANLIFE: Motion-Learning Life Evolution』はいまの時代に合った作品なのだと思う。アウトプット先としてちょうどいいのがたまたまゲームだっただけで、世が世ならもう少しアート的になっていた可能性もある。
僕は本能が発露したようなインディーゲームが好きなのだ。作家性を前面に出し、好きなものを好きなように作ってほしい。大手メーカーとは異なる情念を見せてくれ。