ロシアのウクライナ侵攻を巡る停戦案を巡り水面下での協議が行われる中、フランスの“核の傘”発言が注目されました。

国際条約上、核兵器の保有が認められているフランス。
思惑を検証します。

フランスのマクロン大統領は3月5日に行ったテレビ演説で「フランスの核の抑止力でヨーロッパの同盟国を保護することについて、戦略的な議論を始める」と述べ、ロシアの脅威が迫っているとしてフランスの核の傘をヨーロッパに広げる構想を表明。

この発言に至るまでに入念な準備が行われていたかのようでした。

2024年12月にさかのぼります。

フランスの航空宇宙軍は、バルト三国の領空を守るためリトアニアの飛行場に「ラファール」戦闘機4機と隊員を約2カ月にわたり、派遣。

ラファールは、迎撃戦闘機としてロシアの戦闘機を空中で追いかけた場面もありました。

フジテレビ・能勢伸之特別解説委員:
私が注目したいのは、派遣されたラファールB戦闘機が核抑止を任務とするフランス航空宇宙軍の第4戦闘航空団に属している点です。第4戦闘航空団にはラファールBがその5倍の20機あり、射程500から600kmの超音速の核ミサイル「ASMP-A」を発射できるとされています。

地図を元に見ていきます。

リトアニアの飛行場からモスクワまでは直線距離で約890kmです。

そこにラファールBが展開すると、ロシア領空に入らなくてもミサイルはモスクワに到達できることに。

フジテレビ・能勢伸之特別解説委員:
つまり、超音速核ミサイルASMP‐Aを搭載したラファールBが、万が一シャウレイ飛行場を離陸し敵機をかいくぐれば、モスクワなどロシア西部の都市や基地が核ミサイルの射程になり、ロシアの脅威になりうるということです。第4戦闘航空団がシャウレイ飛行場で2カ月の実績を積んだ上で、マクロン大統領はヨーロッパ同盟国への核の傘発言を行ったのです。

もともとオランダやドイツなど、NATO(北大西洋条約機構)の一部の国はアメリカと核共有を行い、自国の「F‐35A」戦闘機にアメリカ製の核爆弾を搭載する能力を付けようとしています。

アメリカの核爆弾を使っての核抑止のため、核爆弾の使用にはアメリカの同意が必要です。

しかし、フランスの核ミサイルはフランス大統領の権限であるため、アメリカの同意は必要ありません。

ドイツの次期首相と目されるメルツ氏は「われわれは核抑止力で共に強くならなければならない」として、フランスやイギリスと協議する意向を示しました。

フジテレビ・能勢伸之特別解説委員:
ロシアのラブロフ外相は、フランスの核の傘構想を「脅威」と述べる一方、「3つか4つの核爆弾で全てを守ろうと考えるのは滑稽」とするなど発言が一貫しません。米露交渉では対象になりにくい上、西側のヨーロッパ諸国独自の安保体制構築につながりかねないフランスの核の傘構想への対処を考えあぐねているのかもしれません。