“安全保障に強い”といわれる石破首相は、アメリカ製の大型輸送機C-17の購入に意欲を示しているが、防衛省・自衛隊では慎重な意見が強く、「石破首相は“装備品好き”だ。省内で欲しいなんて言っている人はいない」との声も聞こえる。

石破首相が購入に意欲 米製C-17輸送機とは

2月にアメリカを訪問し、トランプ大統領と会談した石破首相。関係者によると、会談では、アメリカ製の大型輸送機C-17の購入に意欲を示したという。

アメリカ製の大型輸送機C-17
アメリカ製の大型輸送機C-17
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C-17は、自衛隊が保有する輸送機のC-2やC-130に比べて約2倍の積載能力があり、より多くの装備品や人を運ぶことができる。

衆院予算委員会で「輸送機は多くの物を積めれば積めるほどいい」と述べた石破首相(4日)
衆院予算委員会で「輸送機は多くの物を積めれば積めるほどいい」と述べた石破首相(4日)

石破首相は4日の衆院予算委員会で、一般論として「輸送機は多くの物を積めれば積めるほどいい」と述べていて、購入に意欲を示す理由には、C-17の高い積載能力が含まれるとみられる。

仮にC-17を導入した場合には、災害が起き自衛隊が派遣された際に、多くの物資を一度に運べるほか、アフガニスタンやイスラエルで実施した邦人輸送などにもメリットがある。

自衛隊の災害派遣の頻度が増し、「台湾有事」の危険性も高まる中、C-17に期待できる面は大きいともいえよう。

「中古品を買うより…」「取得後の負担」C-17“不人気”の理由

しかし、アメリカ製のCー17を日本で運用するにはいくつかの懸念がある。

すでに製造が中止されいるCー17の整備にはコストがかかることが想定される
すでに製造が中止されいるCー17の整備にはコストがかかることが想定される

まず、Cー17はすでに製造が中止されていて、購入した場合は、整備のための部品の調達などにコストがかかることが想定される。

ある幹部自衛官は、「製造ラインも止まっている中古品を買うより、新しい機体を買った方が今後の可能性が出てくる」と述べている。

また、防衛省内では、人材育成を巡る慎重論も聞かれる。

防衛省内では人材育成を巡る慎重論も聞かれる
防衛省内では人材育成を巡る慎重論も聞かれる

新たな機体を運用することになるため、パイロットの育成に年月がかかり、整備士にとっても、一から機体について学ばなくてはいけないというのだ。

省内では「(人的・金銭的)コストを考えて、欲しいと思う人はいないだろう。自衛隊の負担が増える」との指摘があがり、航空自衛隊で聞かれるC-17への評価も「使う機会は少ないが、あったら便利みたいな感じ」と低調だ。

そもそも自衛隊基地の滑走路では…

さらには、自衛隊基地の滑走路の強度や長さを巡る問題を指摘する声もある。防衛省幹部は「かなり大きいから、それを飛ばせる基地があるのか…」と言葉を濁す。

C-17を導入すると滑走路の整備負担が増える可能性がある(※画像イメージ)
C-17を導入すると滑走路の整備負担が増える可能性がある(※画像イメージ)

C-17のような大型機を使用できる日本の滑走路は限られ、導入した場合は滑走路の整備負担が増える可能性があるというのだ。

C-17導入について、防衛省からは、「首相の20年の持論」に過ぎないとの見方や、「トランプ大統領の機嫌を意識し、関税を止めてもらうためでは」といった冷ややかな声も聞こえる。

“盟友”中谷防衛相も「本気で求める認識の人はいない」 

こうした中、中谷防衛相のC-17に対する考え方が、14日の記者会見で明らかになった。

購入に否定的な見解を示した中谷防衛相(14日)
購入に否定的な見解を示した中谷防衛相(14日)

中谷防衛相は、「もう既にアメリカではC-17の製造を中止して、部品も含めて全ての調達ができない状況にあると聞いている」として「本気でこれを求めるという認識にある人は、まず、いないと思う」と購入に否定的な見解を示したのだ。

また、「大型ヘリの輸送は必要な部分もあり、機動展開能力のあり方については不断に検討していきたい」と述べた。

いわば“盟友”の石破首相と中谷防衛相
いわば“盟友”の石破首相と中谷防衛相

長く自民党の「防衛族」として知られている石破首相と中谷防衛相は、いわば“盟友”。

“C-17導入論”について中谷防衛相は、「現時点において、石破首相自身も何か決めて話しているというものではないと認識している」とも述べた。
(フジテレビ政治部・防衛省担当 鈴木杏実)

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鈴木杏実
鈴木杏実

フジテレビ報道局政治部記者。防衛省担当。