日々、世界を翻弄するトランプ大統領。国際情勢、そして日本への影響は…。
トランプ劇場の先に待ち受けるは、最悪のシナリオなのか。トランプ氏の頭の中にあるものは?

トランプ大統領就任後に打たれた“手”と世界情勢の変化を徹底分析する。
“公開口論”以降、トランプ氏の言動に揺れる世界情勢
トランプ大統領の執務室に、ある変化が起きていた。

2025年1月の就任直後、画面右側の肖像画は第7代大統領アンドリュー・ジャクソンだったが…現在は、別の人物が。それは、第40代大統領ロナルド・レーガン。
1980年代「強いアメリカ」をスローガンに人気を集め、経済の再生と軍備拡張でアメリカの大国主義を推し進めた人物だ。
世界を翻弄するトランプ大統領は、先人の影に何を見ているのか…。

トランプ大統領:
何百万という命を賭けの対象にしている。第3次世界大戦が起きるかどうかを賭けたギャンブルをしている。

前代未聞の“公開口論”以降、トランプ氏の言動に世界が揺れている。
3日 ウクライナへの軍事支援を一時停止

トランプ大統領:
ゼレンスキー大統領はもっと感謝すべきだ。この国は彼らをどんな時も支えてきたからだ。

トランプ大統領が、ウクライナへの全ての軍事支援の一時停止を命じたとアメリカのメディアが報じると…フランスのマクロン大統領は、核兵器による抑止力、いわゆる「核の傘」をヨーロッパ全体に広げる議論を開始すると宣言。
トランプ発言の矛先は日本にも…
6日 日米同盟への“不満”

トランプ大統領:
日本を好きだし、素晴らしい関係にある。しかし、我々は日本を守らなければならないが、日本は我々を守る必要がない。
すぐさま石破総理は…

石破首相:
日本が一方的に守ってもらっているという、そういう関係だけではない。基地提供義務は負っているということであって、そのことがどれほど重要な意味を持つか、きちんとお話をしていかねばならんことであって
さらに、ウクライナ情勢をめぐってロシア寄りの動きを見せてきたトランプ大統領だが、突然…
7日 “ロシアへの大規模制裁”検討

トランプ大統領のSNS:
停戦と平和に関する最終的な和解・合意が達成されるまで、ロシアに対する大規模な銀行制裁や経済制裁、関税を強く検討している。
ロシアへの大規模な制裁を示唆する一方…
トランプ大統領:
カードを持っていないウクライナと交渉する方が難しく感じる。最終的な決着をつけるという点では、ロシアと交渉する方が簡単かもしれない。

ウクライナが交渉に消極的と指摘し、双方に圧力をかけた。

また、中国、カナダ、メキシコへの関税やイランとの和平合意についても、強烈なメッセージを送り、世界を翻弄し続けている。
その狙いは、一体何なのか?
トランプ氏の“頭の中”を知る手掛かり「大統領令」
トランプ大統領の“頭の中”を知る手掛かりとなるのが、1月の就任以来、連日のように出し続けている大統領令。

議会の承認なしに、大統領の権限で出すことができ、法律と同等の拘束力を持つ命令は、3月7日までに、実に82件にも上る。

地政学的リスクコンサルティング会社 研究部長 アンドリュー・カピストラノ氏:
任期の初めに、これほど多くの大統領令を出すのは、近年では前例のないことです。
Mr.サンデーの取材そう答えたのは、トランプ政権を研究し、大統領令を分析しているアンドリュー氏。
ここまでの大統領令は80を超えるが、実は大きく5つに分類できるという。
アンドリュー氏:
1つは、バイデンが行っていたリベラルな政策や考えを排除する事です。
トランプ氏は、バイデン前大統領が出していた多くの大統領令を撤廃する、という大統領令を発令。

その上、バイデン政権が導入していた多様性に関連する行政の取り組みや、紙ストローなども廃止した。
アンドリュー氏:
トランプ氏は規制を撤廃したいと考えています。バイデンが作ったそれらの規制がアメリカ企業の成長を妨げていると考えているんです。
そして、2つ目は、「アメリカの利益最優先の外交」。例えば…

トランプ大統領:
何兆ドルもの費用を負担させられていた不公平な「パリ協定」から離脱する。腐敗したWHO(世界保健機関)からも離脱する。
地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」でさえ、アメリカの利益を妨げると判断したものは、容赦なく切り捨てる。
アンドリュー氏:
価値観などより、アメリカの利益になることに、より重きを置くのです。
さらに3つ目は「アメリカの利益最優先の経済政策」。
そして4つ目の「国境や移民」についても、アメリカ国民の納税に支えられている不法滞在者の取り締まりを強化するなど、アメリカの利益を優先する内容。
そんな中、最後の5つ目は…
アンドリュー氏:
トランプ氏は、大統領令でメキシコ湾をアメリカ湾に改名しました。このような、愛国心を持つ支持者たちが喜ぶ政策も、大統領令で行っています。
中には、国民の関心事であるジョン・F・ケネディ元大統領の暗殺に関する機密記録を公開するという大統領令も…。

こうして、コストをかけず支持を高めるための大統領令もあるという。
そこから透けて見える想いは…
アンドリュー氏:
トランプ氏が望んでいるのは、アメリカを再び偉大にする動きを次世代につなぐことです。次の大統領のための基盤を築き、自身が新しい共和党の遺産となることです。
トランプ氏が目指しているというのは、世代を超えて築き上げる“強いアメリカ”。
そんなトランプ氏が追う背中こそ…執務室に肖像画を掲げた、第40代大統領ロナルド・レーガン。
政権を率いた1980年代は、トランプ氏が不動産王としてテレビで人気者だったころ。

当時のレーガン大統領は、まさに「強いアメリカ」を推し進め、一時は日本の半導体製品などに100%の関税をかける強気な対応も見せていた。

その姿は今、各国に高い関税をかけるトランプ氏と重なる部分も…

アンドリュー氏:
トランプ氏の服装や振る舞い方は80年代のレーガンの想起させるものでした。彼は間違いなく、レーガンのようになりたいと考えているはずです。実際、トランプ氏は最近「レーガンは偉大な大統領だった」と発言しています。
「マッドマン・セオリー」と呼ばれる交渉法
見据えるのは、強いアメリカ。
一方、その手法は、レーガン元大統領とは一線を画すという。
アンドリュー氏:
トランプはビジネスマンです。ビジネスの手法を使って、政府をより効率的に運営し、アメリカを再び偉大にすることができると信じています。
中でも今、目立っているというのが…
アンドリュー氏:
不確実性を作り出して影響力を高めるというものです。交渉で立場が強くなり、条件などを支配できます。
「マッドマン・セオリー」と呼ばれる、その交渉法は、普通では考えられない言動を取ることで、相手に自ら譲歩させるというもの。
アンドリュー氏:
いい例があります。(イスラエルの) ネタニヤフ首相がトランプ氏を訪問した時、トランプ氏は「アメリカがガザを買う」と言いました。
普通ならあり得ない話ですが、アラブ諸国はこれを拒否し、ガザ再建のために530億ドルを出資する計画を始めたんです。

誰もが驚く話を持ち出すことで、相手が自ら考え、動くように仕向けるというトランプ流。
改めて、ウクライナ情勢を見てみると…ゼレンスキー大統領との会談で激しい口論となった後、「トランプ大統領が、ウクライナに対する軍事支援を一時停止するよう指示した」と、アメリカメディアが報道。
すると、翌日…

EU・フォンデアライエン委員長:
今は再軍備の時。ヨーロッパは国防費を大幅に増やす準備ができている。
EU・ヨーロッパ連合は、ウクライナ支援などのために約128兆円も資金確保を目指す「ヨーロッパ再軍備計画」を発表した。トランプ大統領と親しく政権内部を知る、現地の専門家は…

米「ハドソン研究所」日本部長 ケネス・ワインスタイン氏:
(自分の) 影響力を使って人々に自分のやりたいことをやらせようとする。これはまさにトランプ効果です。大統領は、ヨーロッパにもっとウクライナ問題に介入して欲しいのです。

侵攻開始から3年、アメリカがウクライナの軍事支援に投じた金額は、ヨーロッパ各国を遥かに凌ぐ。
トランプ大統領の言動は、アメリカの負担を減らすためのものだったのか。
さらに、ウクライナに対しては…
ケネス・ワインスタイン氏:
大統領の考えは、アメリカがウクライナのレアアースを一部得る、その見返りとして、アメリカ人をウクライナに送り、発掘させることで、ロシアがさらなる侵攻に出られないよう防護線にしようというものです。
激しさを増すロシアからの攻撃で、ウクライナの状況が悪化する中、ゼレンスキー大統領が明らかにしたのは、
ゼレンスキー大統領:
11日にサウジアラビアでウクライナとアメリカの高官が会談を行う。

再び話し合いの場を持つ両国。トランプ大統領の次なる一手は何なのか。
(「Mr.サンデー」3月9日放送より)