アメリカは、常に変わろうとしている。その動きが表面化し始めた。
無名の女性活動家アレクサンドリア・オカシオ・コルテス(28)が、ニューヨーク市クィーンズ区で行われた6月26日の民主党下院議員予備選挙で、10期当選の重鎮ジョン・クローリー(56)を得票率58%で破った。2018年の中間選挙前に、民主党選出の下院議員を絞り込むもので、コルテスの選挙資金は、クローリーの10分の1という戦いだった。しかし、有権者は、彼女を選んだ。
“We meet a machine with a movement. That is what we have done today.” @Ocasio2018 looks up at @NY1 screen and realizes how big her lead is. #NY14 pic.twitter.com/SFSLQPqTXP
— Pat Kiernan (@patkiernan) 2018年6月27日
「今年の中間選挙を占うことになるかも」
コルテスは、2016年の大統領選挙で、民主党から立候補した若者に人気のバーニー・サンダース上院議員(76)の選挙を支援し、「国民皆保険」「大学授業料の無料化」など民主社会主義的な公約を掲げた。プエルトリコ系で、移民が多数派を占めるクィーンズ区で、白人が下院に選出されているのはおかしいと訴えて、大勝した。
「ラティーノの政治経験がない女性が、白人男性を破るというのは、今年の中間選挙の傾向を占うことになるかもしれない」
「民主党の中でも、支配層に対する不信から、より進歩的な候補者が選ばれる傾向が広がるかもしれない」
と、ニューヨークの1選挙区のローカルニュースが、全国ニュースとなって、1日中騒がれた。
「母はプエルトリコ出身、父は(ニューヨーク低所得層エリアの)ブロンクス出身でお金持ちでもない私のような女性が、選挙に出るべきではないかもしれない。でも、同じ議員を20年も選出してきて、一体誰が変化を引き起こせるのか考えた時、選挙に出ようと思った。私たちの生活では、家賃は上がる一方で、賃金は上がらない」
「民主党員でも、企業からお金を集め、差し押さえ不動産から利益を得ている人々は、子どもを私たちの学校にやらないし、私たちと同じ水道水は飲んでいないし、私たちの代表ではない」(コルテスのビデオより)
過去最高の女性候補者が立候補を予定
コルテスは1年前までは、ニューヨークの中心部のタコスレストランで、バーテンダーとして働いていた。同僚の女性バーテンダーは、
「何か決心すれば、どんな出自だとか関係ないということよね」
と、ニューヨーク・ポストに語っている。
「これはお金と人々との戦いだ」
「私には人々が付いている。あっちはお金はある」とした通り、選挙戦中、クローリーのテレビCMは、ローカル・全国ニュースの間に頻繁に見たが、コルテスのCMは一度も見なかった。
一方、クローリーは、14年間予備選挙では無風で勝利し、今回は2度あった候補者討論会もワシントンでの公務を理由に欠席していた。
民主党内で、サンダース型の候補者が有利になるという見方に対して、民主党トップのナンシー・ペロシ少数党院内総務は、こう反論した。
「コルテスのケースは、ニューヨークの非常にリベラルな1選挙区だけで起きたことです」
一方、2018年11月に行われる中間選挙では、下院・上院議員、州知事から地方自治体議員に至るまで、過去最高の女性候補者が登場する見込み。AP通信によると、下院議員選挙で309人、上院議員で42人が立候補する予定だ。
背景は、トランプ大統領の文壇的な政策や、セクハラや性的暴行をなくそうとする#MeToo運動の盛り上がりだけではない。白人男性という従来の支配層に挑むマイノリティの代表として、女性が立ち上がるという傾向にもつながり、共和党でも過去最高の女性候補者が名乗りを上げている。
中間選挙だけでなく、アメリカでは人々が声を上げて、具体的な運動につながる傾向が広がり、継続している。主なものは以下のとおり。
- トランプ政権発足後に始まったウィメンズ・マーチ
- フロリダ州での高校銃撃事件を受けて、全米の高校生が銃規制を訴えて立ち上がった#NeverAgain運動
- #MeToo運動
(本文敬称略)(文・津山恵子)