BBCがテレビ・ラジオチャンネルの改革を発表 デジタル移行本格化
BBCのティム・デイヴィー会長は26日、テレビとラジオチャンネルの改革を発表した。子供向けなどのチャンネルを従来の放送からオンラインに移行するほか、イギリスと国外向けで別々に展開しているニュースチャンネルを統合する。
デジタルへの移行が決まったのは、子供向け番組「CBBC」と、ドラマやドキュメンタリーなどを専門とする「BBC Four」。これらのチャンネルの番組は今後も制作され、イギリス国内からはオンラインアプリ「BBC iPlayer」で視聴できる。さらに、ラジオの「Radio 4 Extra」は、オンラインでポッドキャストなどを配信しているBBCサウンズに移行する。
イギリスと国外向けで別々に展開している2つのニュースチャンネルは、ひとつに統合される。
BBCは今回の改革について、コスト削減の一環と説明。「現代的でデジタル主導の、合理化された組織」づくりの一端を担うものだとしている。
これにより、年間2億ポンド(約320億円)の削減が見込まれるほか、デジタル・プラットフォームを優先する形で、サービス提供を再編成する。ただし、「CBBC」と「BBC Four」、「Radio 4 Extra」は少なくとも向こう3年間、テレビとラジオでの放送を続けるという。
デイヴィー会長はまた、各地のラジオ局とローカルニュースに関する変更も発表した。オックスフォードとケンブリッジ発のテレビニュース番組はそれぞれ、サウサンプトンとノーリッチのニュース番組に統合する。
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イギリス政府は今年1月、受信料を向こう2年間、年159ポンド(約2万5500円)に凍結することでBBCと合意した。その後はインフレ率に合わせて値上げする予定となっている。
一連の改革に伴い、BBCは向こう数年間で、公共放送部門の人員を最大1000人削減する可能性がある。
デイヴィー会長は、この提案について労働組合に相談すると述べた。
「常に革新的」
デイヴィー会長は声明で、BBCは「より速く進化し、我々を取り巻く市場の大きな変化を受け入れる」必要があると述べた。
「デジタル・ファーストのBBCを構築するタイミングだ。本当の意味で新しいもの、(イギリスの公共放送の基礎を築いた)リース卿の意志を引き継いだデジタル時代の組織、イギリスや世界にとって前向きな勢力を作るべきだ」
「独立していて、公平で、常に革新的で、すべての人のための組織を。これまでにない、新鮮で新しい、グローバルなデジタルメディア組織を」
会長は従業員に対し、BBCのリソースは現在オンラインよりも放送に集中しすぎていると述べ、「私たちは、オンデマンドの世界に移行しつつある」と付け加えた。
統合後のニュースチャンネルは、24時間放送の「BBCニュース」として、イギリス内外の視聴者に提供される予定。これにより、放送内容も国内外の区別を着けず、統一されたものが増える。
その他の変更点
- ラジオ4ロング・ウェーブへに対する個別の番組編成を終了する計画
- イギリス国内でオンラインでローカルニュースを提供する地域を増やし、100人の雇用を創出する
- BBCオーケストラな複数のパフォーマンス部門について、代替の資金調達方法を考案する
- オックスフォードとケンブリッジの専用局運営を終了し、より広い地域向けのニュース番組に統合する
- 通信業界の監視機関Ofcomに、iPlayerでの番組シリーズ配信やアーカイブ配信に関する制限撤廃を申請する。これにより、視聴者の75%が毎週、iPlayerを利用してくれることを目指す
- 国外向け「ワールド・サービス」の他言語放送の一部をデジタルに完全移行する
- 一部のポッドキャスト番組について、商業部門「BBCスタジオズ」制作とし、収益化することを検討する
ナディーン・ドリス文化相は26日、労働者階級出身者に対する「機会の平等を促進」するよう命じる法的指示を出した。BBCが政府と取り決めるロイヤル・チャーター(王室認可)の中期的な見直しの一環として行われたもので、従業員の25%を社会・経済的弱者層にする目標が含まれている。
BBCは、この方針は自社ですでに設定している目標を確認するものだと述べている。
BBCはまた、2027年末までにラジオ制作費の50%とテレビ制作費の60%を、ロンドン以外で使うよう要請されている。
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また、2025年までに年間1000人の実習生を送り出し、そのうち30%を社会・経済的弱者層が占めるようにする必要がある。
BBCのリチャード・シャープ理事長は声明の中で、「中期的な見直しは我々のロイヤル・チャーター(王室認可)に組み込まれている。我々はこれを歓迎し、完全かつ建設的に関与する。政府やOfcomとの協力を楽しみにしている」と述べた。
ドリス文化相は先に、受信料モデルは「完全に時代遅れだ」として、現在の受信料設定が2027年に失効する前に、BBCの新しい資金調達モデルを見つけたいと語っていた。
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ボリス・ジョンソン首相の報道官は26日、「ジョンソン首相は、BBCは世界的な放送局だが、他の放送局と同様、急速に変化する状況に適応する必要があるとの見解を堅持している」と述べた。
<解説>アモル・ラジャン・メディア編集長
今回の発表は、BBCのデジタルサービスへの軸足を、野心的かつ過激に加速させるものだ。これは、財政と技術という2つの分野での脅威を回避しようとする試みでもある。
財務的には、生活費危機を受けて受信料が2年間凍結されたため、BBCはいっそうの節約を迫られている。
そして技術的には、将来的に受信料を支払う消費者は、デジタル技術に慣れた人がほとんどだという点だ。それにもかかわらずBBCは依然として、テレビやラジオを通じて消費されることが多く、資金の大半は、そうした従来の手段で人々に届くサービスに費やされている。
視聴者が見たり聞いたりする番組にも大きな影響があるだろう。広く親しまれているドラマやTVフォーマット、ポッドキャストに新しい番組が加わるなど、ポジティブな面もある。
一方で、これまで何年も受信料を払ってきた人たちが大切にしてきた番組がなくなってしまうという、マイナス面もある。
どの番組が残るのかはまだ不明だが、受信料の凍結が、厳しい選択の理由づけにはなる。