ウクライナ侵攻で考える「芸術への愛」 ロシア文学者の亀山郁夫さん
ロシアのウクライナ侵攻が始まってから、国内外で演奏会が中止になるなど芸術分野にも影響が及んでいます。侵攻が長期化するなか、ロシアの音楽や文学とどう向き合えば良いのでしょうか。名古屋外国語大学(愛知県日進市)の学長で、ロシア文学者の亀山郁夫さんに話を聞きました。
いまは「聴きに行かない」選択 悪いことじゃない
――プーチン大統領との関係が深いロシア人の世界的指揮者、ワレリー・ゲルギエフ氏は国外のほぼ全てのポジションを失いました。国内でもロシア音楽の演奏を取りやめた楽団があります。
一時的に嫌悪の感情にとらわれるのは仕方がないと思います。これだけロシアの文化に関わってきた僕ですら、若干、躊躇(ちゅうちょ)の気持ちが、ないわけではないんですよ。プーチンという1人の独裁者のメンタリティーによって世界がこんなに変わり、ここまでひどい状況になっている。音楽というのは、どこかでその国の精神性を示しているところがありますから、この状況下で、聴きに行かないという選択をすることは、決して悪いことじゃないと思っています。音楽や芸術を愛している人は、それに永続性を持って接しているので、問題はありません。しかし、コンサート妨害などというのは、論外です。芸術家たちは自粛などせず、自分たちの音楽的メッセージを堂々と、自信をもって主張していくことが一番重要です。ひるんではいけません。
ゲルギエフに関して言えば…
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