ポン・ジュノ監督、ナウシカ&トトロからも影響『ミッキー17』謎のモンスター誕生秘話
映画『パラサイト 半地下の家族』のオスカー監督ポン・ジュノの最新作『ミッキー17』から、宮崎駿監督作品からも影響を受けたという、謎のクリーチャーが登場する本編映像が公開された。
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『TENET テネット』のロバート・パティンソンを主演に迎えた本作は、過酷な任務で死ぬ度に、コピーされた体へと記憶が引き継がれる“死んでも働く”仕事についた若者ミッキー(ロバート)の物語。ある日、手違いから、もうひとりの自分(コピー)と出会ってしまったことで、使い捨てのような日々をすごしていた彼の人生は予想外の方向へと転がりだす。
公開された本編映像は、任務中に落下事故に遭ったミッキーが、本作に登場する謎のモンスター、“クリーパー”に引きずられる場面。クリーパーを前に何度目かの死を覚悟するミッキーだが、彼らは一向に食らいつくそぶりを見せない。それどころか、大きなクリーパーが尻尾を巧みに使って困惑するミッキーを引き上げると、中小のクリーパー総がかりで雪原に押し出す場面が収められている。
その見た目が、宮崎監督の『風の谷のナウシカ』(1984)に登場する“王蟲(オーム)”を彷彿させるクリーパーについて、ポン・ジュノ監督は「『Okja/オクジャ』(2017)のときに主人公のミジャがオクジャのおなかの上で昼寝をするシーンがありましたが、あれはまさに『となりのトトロ』(1988)からインスピレーションを受けたシーンでした」と過去作を振り返りながら「クリーパーはもう少し複雑で、様々なインスピレーションが混在しています。デザインそのものは、クロワッサンから着想を得たもので、パンが出発点です。動きに関しては、様々なアイディアが組み合わさっています」と明かす。
「クリーパーは三種類。ジュニアクリーパー、ベイビークリーパー、そして女王蜂のように一匹だけのママクリーパーがいます」と説明し「ジュニアクリーパーがボールのように丸まっていく動きが登場します。それはアルマジロを参考にしています。出来上がったものを見て、ダンゴムシのようだと言う方もいましたが...…」と前置きしながら、「『風の谷のナウシカ』で王蟲が群れになって突進するシーンも、インスピレーションの源だったと言えます」と告白。そのうえで「クリーパーが群れになって絡み合う姿は、アラスカのトナカイの動きのパターンがモチーフとなっています」など、さまざまなインスピレーションの源を明かした。
そして「宮崎駿監督はいつも生態系や自然、環境に対するテーマを描かれていますが、私も大きな関心を持っているテーマですので、動物やクリーチャーを表現する際には、宮崎駿監督の作品は尽きないインスピレーションの源になっていると思います」と、宮崎監督の表現には常に影響を受け続けていると語っている。
さらに、劇中のクリーパーのアクションについて「先ほど3つのクリーパーについてお話しましたが、その中でアクションを担当しているのは、ダイナミックに飛び跳ねながらアルマジロのように群れになって動くジュニアクリーパーです。すべてのクリーパーが、“ウルレーション”と呼ばれる直立して鳴き声を発する姿を見ると、多くの脚があることが分かります。複数の脚を持つ生物は、走るときにとても不思議な動きをします。リズムが妙なんです。専門用語ではウォークサイクルといいますが、これを作るのが、クリーチャーを表現する上で最も重要な基本です。ジュニアクリーパーが勢いよく走るとき、ウォークサイクルをどうするべきか。短い脚がいくつもあって、それらを走らなければなりません。レファレンス先を探している中、CGチームのほうから『となりのトトロ』に出てくるネコバスのアイディアが出ました。あのネコは足が4本ではなく、何本もある。『となりのトトロ』ではその足が絶妙なリズムで動く様子が見事に描写されています」とCGチームが、『となりのトトロ』を参考にしていたことも明かしている。(編集部・入倉功一)