米国向けの農林水産物輸出額の6割強を占める養殖ブリ=長島町の東町漁協(鹿児島県提供)
トランプ米大統領の就任を受け、鹿児島県内の農林水産関係者からは21日、「関税引き上げで輸出が停滞するのでは」などの懸念する声のほか、「米国依存から脱却する」と販路開拓を模索する動きが見られた。
県の2023年度農林水産物輸出額367億円のうち米国向けは170億円に上り、国・地域別で最大。輸出額は3年連続で過去最高を更新中で、県は25年度までに500億円を目標に掲げる。ただ関税措置が導入されればブレーキとなりかねない。
米国向け輸出額の6割強を占める養殖ブリ。東町漁協(長島町)の山下伸吾組合長(64)は「米国内の輸入品価格が上がり、外食産業が冷え込めば、県内生産者が受ける打撃は大きい」と警戒感を強める。同漁協の年間出荷200万匹のうち輸出は40万匹で、うち9割が米国向けだ。「米国依存はリスクが高い。今後は、東南アジア向けの割合も増やしたい」
「やっと底を脱し、これからどんどん売り出そうというところなのに」と嘆くのは県茶生産協会の坂元修一郎会長(69)。国内のリーフ茶離れで茶価が長らく低迷する中、欧米を中心とした抹茶ブームを背景に23年度輸出額は前年度比2.4倍と急伸した。輸出増を見越し、抹茶原料となるてん茶の工場整備や有機栽培への転換も加速する。「円安が進み、日本経済が冷え込まないかも心配だ」とぼやいた。
県森林組合連合会の野村輝明専務(69)は、対中関税の行方も不安視する。県産丸太の米国向け輸出はわずかなものの、中国経由でフェンス材などに加工された木材の行き先は米国だ。対中関税強化は政権発足初日こそ見送られたが安心はできない。野村専務は「第1次政権下の関税強化では中国が丸太を仕入れなくなり、県産材の輸出も減った」と気をもむ。
JA県中央会の山野徹会長(69)=全国農業協同組合中央会会長=は「現時点でどのような影響が出るか不透明。今後の動向を注視したい」とコメントした。