中国のハッカーってどんな人たち? 兵士のブログが発見される

  • author 福田ミホ
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中国のハッカーってどんな人たち? 兵士のブログが発見される

意外なほど普通の若者。

アメリカ(日本も)に対して、中国から無数のハッキング攻撃が行われています。それも、中国人民解放軍が組織的に攻撃を仕掛けているとも言われています。そんな攻撃を実際しているのはどんな人たちかって、やはりそれなりの教育を受けているんだろうから、いわゆるエリートなのかな? という気がします。

でも、ロサンゼルス・タイムズ紙が発見した、当時中国人民解放軍に所属していた青年ハッカーのブログでは、どうも様子が違います。彼ら中国軍ハッカーの多くは、少なくともあまり恵まれた環境にはいないようです。

その青年、ワンさんのブログは4年ほど前で更新が途絶えており、これまで発見されていませんでした。そこには625本のエントリがあり、世界最大の組織的ハッキング作戦の内部での生活がどんなものか、彼の視点から詳細に書かれています。

ワンさんは人民解放軍が管理する情報工学大学で修士号を取得し、その後すぐの2006年、上海のハッキング部隊に加わりました。トロイの木馬を使った攻撃の精度向上などに取り組んでいましたが、そんな中でも普通の会社にいる若手社員のような不満も感じていました。たとえば軍の上層部について、2007年の記事にはこのように書かれています。

なんで作業ユニットはみんな街のへんぴな場所にあるのか、理解しがたい。そもそも年寄りどもの考えることは理解できない。もっと若手のことを考えるべきだろう。こんな刑務所みたいな環境で、僕らみたいにやる気のある若手が耐えられるだろうか?

また、ワンさんたちは英語を話すことを強制されていながら、勉強のためにアメリカの雑誌購読を希望しても難色を示される...といった理不尽なエピソードもつづられています。高校の同級生と会ったときの、こんな話も気の毒になります。

友達にはみんな、明るい未来がある。弁護士になったのもいるし、不動産とか証券関係のやつもいる。民間ソフト会社でプログラムを書いてるやつとか。彼らの収入と比べてしまうと、僕なんか挨拶するのすら恥ずかしい。

そんなワンさんの唯一の楽しみがインターネットでした。ロサンゼルス・タイムズにはこう書かれています。

金もなく自由な時間もほとんどない彼は、インターネットに安らぎを見出した。買い物をし、友達とおしゃべりし、ガールフレンドを口説いた。映画やテレビ番組を見た。特にFoxの「プリズン・ブレイク」からは強いインスピレーションを得て、そのタイトルをブログに付けた。

ワンさんは、中国軍としてのハッキング行為について賛成かどうかは書いていません。でもそういった思想信条レベルではなく、とにかく日々の生活レベルでの暗さは伝わってきます。

多分幸いなことに、彼は2008年に軍を脱退したそうです。

Los Angeles Times

Ashley Feinberg(原文/miho)