
質問しない。それがこの“コメディ”を楽しむ鍵となる。
母国ギリシャで『籠の中の乙女』(12)、『アルプス(原題)/Alps』などの映画を撮ってきたヨルゴス・ランティモスの初の英語作品となる本作で、観客はいきなり彼の独特な世界に放り込まれる。そこで大事なのは、観客もまずルールに従い、受け入れてみること。そこにはユートピアとは逆のディストピアの系譜が流れている。近い未来なのか遠い未来なのか、国家が市民にルールを押しつけ、市民はそれに従っている。それに従っている者は “街”で普通に暮らしている。そしてひと度“独身者”になると、ホテルという矯正施設へ
連行されるのだ。そのパートナー教育では、相方がいることがいかに有益かを刷り込まれる。観客は主人公と同じように戸惑いながら矛盾を経験する。だが忘れてはいけないのは本作が実はコメディであるということ。そこには監督同様、表情を変えない“笑い”が眠っている。
『ロブスター』を観たとき、心が震え、感動した。
いまだに映画のすべてを理解できているわけではないが、
ヨルゴス(監督)は1つの価値観を観客に押しつける監督ではないんだ
―コリン・ファレル