海外レースでVC福岡が大暴れ!トルコのレースで優勝含めUCIポイント荒稼ぎ!新人のレデスマが逃げ切り独走勝利でいきなりプロ初勝利!評価されるべき育成の形と結果
国外で活躍したいという日本人選手や日本のチームは多い。多くの取り組みがなされてきており、資金潤沢なJCLチーム右京のようなチームもあるが、しかし何年たってもそのハードルは高い。そのハードル高き狭き門に、今挑んでいる一つのチームがある。プレイングマネージャーとしても活躍してきた佐藤信哉率いるUCIコンチネンタル登録のVC FUKUOKA(VC福岡)だ。佐藤が30歳でケガのリハビリで始めのめり込んだ自転車競技、会社員との2足の草鞋から、あえて安定を捨て退職してチーム運営一本に絞り9年目、今シーズンは国内最高峰のJ Pro Tourには参戦せず、海外レースを主体として新たな挑戦をしている。
©VC FUKUOKA
シーズン開幕をトルコで迎えたチームは、2月1日のGPアンタラヤ(UCIヨーロッパツアー1.2)ではチームのエースで精神的主柱、ベンジャミン・プラデスがいきなりの4位でUCIポイントを獲得、また初の海外レースとなった木村純気が12位に入った。
また翌日のアンタラヤ・キャッスル・クリテリウムはUCIレースではないものの、翌週のレースに向けて貴重な機会、そこで終始積極的なレース展開を繰り広げる。すると最終ラップ、逃げ集団にいたプラデスに追走集団が追い付いての混沌とした展開となると、新人のジェラルド・レデスマがスプリントで5位を獲得、阿部源が6位と2人がトップ10に入る活躍を見せた。昨年までクラブチームで走っていたレデスマが非凡な才能を披露、早くもその才能の片鱗を見せつけた。
©VC FUKUOKA
そして迎えたGPアスペンドス(UCIヨーロッパツアー1.2)でいきなりチームが爆発する。プロ参戦2戦目となるレデスマとプラデスが山岳で波状攻撃を仕掛けると、レデスマが勢い良く抜け出し、独走態勢を築く。一緒に逃げ集団にいたプラデスがレデスマへの追走を阻むべく後続をきっちりと抑えると、スプリントで3位表彰台を獲得して見せた。更にその背後で第2集団から逃げ集団へのブリッジを抑え込んだ横塚浩平が、残り10㎞で果敢に単独アタック、それに反応こそされたものの10位に入って見せた。結果UCIレースでトップ10に3人が入り、そのうち2人が表彰台獲得と完全にレースを支配して見せた。
©VC FUKUOKA
その翌日に行われたINTアンタラヤ・クレオパトラ・クリテリウムは、周回ごとのポイント積算数で勝者が決まるレースだった。戦略的な走りが要求されるこのレースでは、阿部源がアンタラヤ・キャッスル・クリテリウムの5位に続く6位を獲得、更に前日初優勝を上げたばかりのレデスマが6位に入り、プラデスも11位に入った。
海外へ挑むことは無謀だと思われる中、大きな予算をバックに持たないVC福岡のようなチームがこうして活躍したことは快挙だと言える。国内レースでの活躍だけでは世界には通用しないというのはここ何年も日本のレース界を見ていればよくわかる。そんな中、国内での実績の積み重ねでは決して得られないレース強度と戦略の経験を海外で積む選択をしたチームの英断は賞賛に値するだろう。もちろん結果が伴わなければ評価に繋がらないというリスクを背負っての挑戦であるが、それをきちんと結果に繋げられたのは、チームとして組織的、戦略的にも機能したことが極めて大きい。そして何よりもその中で「勝利する体験」をチームができたことは、何物にも代えがたい大きな宝となるだろう。選手の勝利、そしてチームがそれをアシストして機能するトータルパッケージがうまくはまらない限りできない体験は、選手達にとって大きな自信につながったはずだ。
チーム監督の手腕が問われるチーム運営の中で、佐藤信哉監督本人も自転車競技で選手としてJエリートツアーでの年間総合優勝を果たすなど結果を残しているが、コーチとしてもパラサイクリング日本代表チームのコーチとして杉浦佳子の世界選手権ロードレース優勝、東京パラリンピック2020での金メダル2冠を支えるなど、その手腕は評価されている。 また中学生時代にVC福岡に加入し、2018-2019年、2023年とVC福岡に所属していた鎌田晃輝は2023年のU23全日本チャンピオンに輝くと、JCLチーム右京へと移籍、そして先日行われたU-23アジア選手権でも圧巻の優勝、アジアチャンピオンとなった。
選手の実力のみでは活躍できないのがチームスポーツであるロードレース、業界外から飛び込んできた男は、当初から育成を掲げており、その育成の手腕も高い。日本でも珍しい企業や地域を母体として持たずにここまで這い上がってきたチームは、決してエリート集団ではない。でも泥臭くも毎年結果を残し、勝利を積み重ねていることはもっと評価されるべきだろう。佐藤のこれからの手腕とともに、今後のチームの更なる活躍から目が離せない。
H.Moulinette