元寇から750年 防塁残る福岡市でシンポジウムや記念式典開催へ

山本達洋 松本江里加
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 モンゴル帝国が初めて九州北部へ襲来した元寇(げんこう)の「文永の役」(1274年)から750年となる今年、福岡市内でさまざまな記念プロジェクトが動き出す。最新の研究成果が発表されるシンポジウムや、当時の犠牲者を慰霊する催しなどを通じ、関係者らは日本とモンゴルの相互理解を深めたいと願っている。

 市内には元軍の上陸を阻むために石などで築いた防塁のほか、死亡した元兵を供養する「蒙古塚」が各地にある。防塁は同市西区から東区まで総延長約20キロに及び、残存する部分の多くは国史跡に指定されている。

 記念事業の目玉は、九州大学伊都キャンパス(同市西区)で11月8日に開かれるシンポジウムだ。九州大では旧箱崎キャンパス(同市東区)の敷地内でも防塁とみられる石積み遺構が見つかるなど、研究実績や史料が豊富にある。

 当日はモンゴルからも研究者が来日する予定で、最新の研究成果をもとに元寇の実態や当時の日本へ与えた影響について議論する。シンポの内容は冊子にとりまとめて出版し、次世代の参考になる資料として残したいという。

 また、10月20日には紅葉八幡宮(同市早良区)で、記念式典「平和への祈り」が開かれ、両国の犠牲者を追悼する。日付は1回目の侵攻で元軍が博多湾から上陸し、撤退したとされる旧暦10月20日から設定された。

 紅葉八幡宮が管理する元寇神社(1919年創建、同区)では、神社関係者や近隣住民らが参加する「元寇祭」が毎年執り行われてきた。今年は在福岡モンゴル国名誉領事や、モンゴルから来日する僧侶も参加し、200人規模になる予定。北部九州伝統の「筑紫舞」やモンゴルの楽器「馬頭琴」などの披露もある。

 こうした記念事業を主導するのは在福岡モンゴル国名誉領事のシーテヴェ・アルタン・イルデンさん(54)だ。大阪大学への留学を機に2000年に来日し、IT企業などで働いてきた。16年の熊本地震で被災したモンゴル人を支援した実績などを買われ、19年5月に名誉領事に就任した。

 アルタンさんによると、モンゴルでは「フビライハンの時代に日本へ遠征し、船が沈んだ」ということは知られているが、学術的な研究は日本の方が進んでいるという。「(イベントには)特に若い人に来てほしい。歴史を正しく認識したうえで平和をつくり、一緒に未来へ進んでいければ」と話す。

 アルタンさんの「元寇」とのかかわりは22年。日本とモンゴルの国交樹立50年を記念し、福岡市西区の蒙古山(158メートル)で倒壊したままになっていた石碑「蒙古山之碑」の再建に携わったことがきっかけだ。アルタンさんは「日本の人が、かつての敵に対する慰霊の碑を建ててお祈りしていたことを知って、感動した」と話す。

 その後、防塁やゆかりの寺社や蒙古塚を訪ね歩いた。訪問先で日本とモンゴルの関係について意見交換し、交流を深めてきた。

 在福岡モンゴル国名誉領事館は、記念事業の経費などとして、75万円を目標に、クラウドファンディングQRコード、9月30日まで=と口座振り込み(11月15日まで)による寄付を募っている。

 問い合わせは在福岡モンゴル国名誉領事館(092・775・9262)へ。

元寇750年記念プロジェクトの一覧

◆9~10月ごろ

・紅葉八幡宮(福岡市早良区)や志賀海神社(同市東区)など4寺社で限定御朱印

◆10月20日

・元寇神社(同市早良区)に750年記念碑を建立、除幕式

・モンゴルの僧侶が来日し紅葉八幡宮で記念式典「平和への祈り」

◆11月4日

・飯盛神社(同市西区)で流鏑馬(やぶさめ)の奉納 モンゴル馬術協会が初めて参加

◆11月8日

・九州大学伊都キャンパスで国際歴史シンポジウム

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この記事を書いた人
松本江里加
西部報道センター
専門・関心分野
地方創生、子どもの権利、福祉,など