とても強い人だと思っていた。最愛の人を二人とも失なって尚歩みを止めない人だと。でも違っていた、当たり前に普通の人だった。悲しみと痛みに打ちひしがれ、立ち上がることもできないほど涙に濡れ、もがき苦しんでいた。
その彼を突き動かしたのは怒りだ。卑劣な犯人に、理不尽な司法に、分別のないマスコミに、SNSに拡がる悪気のない悪意たちに。
何故罪のない娘が妻が被害者になったのか。何故被害者遺族が軽んじられるのか。何故それがまかり通るのか。
終わりのない悲しみ苦しみを怒りが満たしてくる。突き動かされる。普通の人。
愛する者たちに、彼を案ずる周りの人々に、人生そのものに、正直に実直にまっすぐ向き合う真摯な人。それが彼だと思う。