チベット暦(チベットれき、英語:Tibetan calendar)は太陰太陽暦であり、密教経典『カーラチャクラ・タントラ(時輪タントラ)』の「世間品」に説かれた暦の体系にもとづいている[1]チベットに『カーラチャクラ・タントラ』が伝来したとされる「火の女兎の年(me mo yos lo)」(丁卯,ラプチュン年(རབ་བྱུང་),1027年)から始まる60年間を「第一ラプチュン」と呼ぶ[2]。1年はそれぞれ新月より始まる12乃至13の太陰月よりなる。閏月は約3年毎に挿入されて季節のズレが調節される。固有の月名はなく、単に一月から十二月までの番号で表される。正月ロサルLosar)と呼ばれ、時期的には現在の太陽暦の1月末または2月に当り、その意味では現行の中国暦春節に似ている。日付はティティによって決まり、欠日や余日がある。

曜日

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曜日西暦と同様7つの天体に割り当てられている。

曜日 チベット文字 読み 天体
日曜日 གཟའ་ཉི་མ་(gza' nyi ma) サ・ニマ 太陽
月曜日 གཟའ་ཟླ་བ་(gza' zla ba) サ・ダワ
火曜日 གཟའ་མིག་དམར་(gza' mig dmar) サ・ミクマル 火星
水曜日 གཟའ་ལྷག་པ་(gza' lhag pa) サ・ラクパ 水星
木曜日 གཟའ་ཕུར་བུ་(gza' phur bu) サ・プルブ 木星
金曜日 གཟའ་པ་སངས་(gza' pa sangs) サ・パサン 金星
土曜日 གཟའ་སཔེན་པ་(gza' spen pa) サ・ペンパ 土星

干支

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日本と同様の十干十二支が各年に当てはめられている。十干は火・土・金・水・木の五行に基づいているが、それぞれの陰陽は兄弟ではなく「ཕོ་མོ་(男女)」で表される。例えば「ས་ཕོ་འབྲུག་ལོ་(地の男の龍の年)」(戊辰)の年の次は「ས་མོ་སྦྲུལ་ལོ(地の女の蛇の年)」(己巳)の年、その次は「ས་ཕོ་རྟ་ལོ་(鉄の男の馬)」(庚午)の年である。この性別は十二支から予測できるため省略することができる。

この60年の周期はラプチュン年(རབ་བྱུང་)・「མེ་ཡོས་(火の兎)」(丁卯)年から始まり、セパ年(ཟད་པ)・「མེ་སྟག་(火の虎)」(丙寅)年で終わる[3]。西暦1027年からの60年間を「第1ラプチュン」と称し、2015年は「第17ラプチュン」の29年目、ニョチェ年(མྱོས་བྱེད་)・「ཤིང་ལུག་(木の羊)」(乙未)年である[3]。 日本や中国と同様にこの干支占星術に利用される。

参考文献

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  • 山口瑞鳳「暦法」『チベット』 上、東京大学出版会、東京、1987年、148-171頁。 
  • 張怡蓀 (1993). 「ལོ་ཁམས་དྲུག་ཅུའི་ལེའུ་མིག」「བོད་ཀྱི་ལོ་རྒྱུས་འདས་པའི་ལོ་ཚིགས་དང་སྦྱར་ཏེ་བསྒྲིགས་པའི་ལེའུ་མིག」『蔵漢大辞典』, pp.3195-3291. 北京: 民族出版社 
  • Norbu, Thubten & Harrer, Heinrich (1960). Tibet is my Country. London: Readers Union, Rupert Hart-Davis 
  • Shakabpa, Tsepon W.D. (1967). Tibet: A Political History. New Haven and London: Yale University Press 

外部リンク

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脚注

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  1. ^ 山口, 1987, p.150.
  2. ^ 山口, 1987, p.150; 張, 1993, p.3195.
  3. ^ a b 張, 1993, p.3195.

関連項目

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