業務を変えるkintoneユーザー事例 第205回
パッケージと比較し940万の導入コスト削減、作業時間も年320時間削減
一度は流れた導入 kintone愛で覆した鶴ヶ島市役所職員の物語
2023年10月13日 09時00分更新
kintoneの導入で変わる介護認定審査会
最初に開発したのは、kintoneの導入のきっかけにもなった介護認定審査会システムだった。審査会で、アナログ作業が年間350時間を超えていたり、大量の紙を印刷しているという課題を一気に解決しよう取り組んだ。また、中嶋氏は個人的に、全国的に行われているアナログの審査会を変革したい、という想いもあったという。
審査会をリモート化することによって、人の移動時間や会場設営の手間を削減。紙をなくすことで、印刷コストや印刷時間、配送作業の時間などを全部削減できた。紙が不要になったので、資料を廃棄する手間もなくなった。
ポータル画面は直感的に使えるUIにして、「審査会カレンダー」アプリに審査会のZoomリンクや資料を閲覧する「moreNOTE」アプリへのリンクを貼った。審査委員はiPadからアクセスし、資料をチェックしたり、審査会に参加する。その際、迷わず使ってもらえるように、操作方法や注意書きを太字や赤字で視覚に訴えるようにした。
資料を添付ファイルフィールドに保存するのではなく、別サービスで閲覧させている理由は個人情報を取り扱うため。kintoneの機能だけでは、PDFファイルの独り歩きを止めることができなかったからだという。
事前審査を行なうことで、審査会の開催時間を短縮することにも成功した。以前は30件あれば、30件について話し合っていたが、あらかじめkintone上で事前審査を行なっていれば、相違のある案件だけを話せば済み、会議の時短につながった。この事前審査アプリも、縦に長くなると使いにくいので、中嶋氏がJavaScriptでタブ表示にするなど、使い勝手にこだわっている。
「介護認定審査会の委員さんは平均年齢で50歳を超え、さらに言えば、市の職員ではないので、システムの利用をごり押しすることができません。独立したアプリを複数用意してしまうと、当然、混乱してしまいます。そういった方々にシステムを受け入れてもらうには、kintoneと外部のサービスをまるっとつなげて、kintoneさえ意識しないような仕組み作りが必要です」(中嶋氏)
稼働して3カ月のタイミングでアンケートを取ったところ、おおむね操作はわかりやすいという評価を得た。リモートで作業できるようになったので、負担が減ったという声が寄せられたという。ペーパーレス化できたので、個人情報が入った資料を紛失するという心配からも解放された。
パッケージシステムと比較すると、導入コストは16分の1になって約940万円削減、ランニングコストも10分の1になって540万円削減できた。介護保険課の多くの課題も解決できた。年間320時間の作業時間の削減と年間4万枚を超える紙の削減が実現する見込みとなっている。担当者からは作業量が減ったので、残業がなくなったと喜びの声が上がり、大きな導入効果を得られた。
次に着手したのはケアマネージャーの作業効率化
審査会に関わる課題は解決し、次に取りかかったのがケアマネージャーによる進捗状況確認の電話の課題だ。全国的に見ても、作業の負担が大きく、個人情報の取り扱いを理由に確認をしない自治体も増えているという。しかし、進捗状況の確認をやめると、ケアマネージャーの作業効率が低下、ひいては市民の介護サービスにも支障が出てくる。
そこで「kViewer」(トヨクモ)を利用して、kintoneの中に入っている進捗状況をウェブ化した。ケアマネージャーはkViewerのビューを見れば、いつでも進捗状況を確認できるようになった。さらには、FAQも作成し、電話する前に見てもらうよう誘導した。その結果、年間76時間の通話を削減できる見込みだ。
ケアマネージャーにアンケートを取ったところ、約90%から負担軽減になったいう評価が得られた。市役所は土日祝日は動いていないが、作業が進められるようになったことも、好評だという。
「誰でも簡単に使えること、ユーザー目線でDXを進めることが重要です。システムを使うのは現場の担当者。私の考えや思い込み、価値観は排除するよう心がけました。私はkintoneを好きになって振られて、今は両思いです。kintoneの可能性信じていれば、結果に結びつきます。向かい風の時には、スキルアップをしたり、何か準備をしておくと、結果も付いてくると感じています」と中嶋氏は語った。
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