コクヨが開設して実際に同社社員が働く実験オフィス「コクヨ エコライブオフィス」。前回は概要を紹介したが、オフィスワーカーにとって大事な創造性はどうなっているのか? 今回は、そのユニークなオフィス構造と使い方を紹介する。
知的生産性や創造力を上げ、オフィスワーカーが明るく働くためには、オフィスはどうあるべきか? コクヨがエコライブオフィスで出した答えは、「適業適季」というコンセプトだ。
「適業適季」とは、身の回りのさまざまな環境や情報を「感じ取り」、それを元に「アイデアを出し」さらにアイデアを「形にし」、各種製品や情報を「発信する」という4つのフェーズを四季になぞらえたもの。
中央にあるグリーンは、周囲に作業スペースがあり、机や電源が用意され、一部はライブラリとして使われている(左)。ユニークなガーデンエリアにあるオープンカフェのような座席も、もちろん全てワークスペースだ(中、右)
このサイクルを繰り返すことで、創造性のある会社やビジネスの多くは(このコンセプトを意識してなくても)うまく回っているという。エコライブオフィスでは感じ取る=冬フェーズを「ガーデン」で、アイデアを出す=春フェーズが会議室やプレゼンスペースのある「スタジオ」、形にする=夏フェーズや発信する=秋フェーズが「オフィス部」となっている。エコライブオフィスがフリーアドレス制を採用しているのも、社員が移動してそれぞれのフェーズで作業できるようにしているからだ。
人に合わせた照度・色温度
エコライブオフィスには新たな試みとして、単なる単一照明だけでなく、LED照明によって、人に合わせた照度・色温度を選べるという「知的照明システム」が導入されている。
これは、センサーによって周囲の明るさなどを検知し、かつ様々な業務に最適な明るさ・色温度が自動的に選択されるというもの。エコライブオフィスの一部に設置されており、会議時、プレゼンテーション時、プロジェクタ使用時などそれぞれに合わせた照度と色温度となる。
最近は、電球型蛍光灯の普及もあって、家庭では蛍光灯色/電球色/昼光色を部屋に合わせて選ぶことが一般的になってきたが、オフィスの照明は色温度の高い蛍光灯色がほとんど。色温度が低い(赤っぽい)照明は、電力消費を抑えられることに加え、目が疲れにくい。
興味深いのは、知的照明システムは照明それぞれに用意されたセンサーと制御チップによって自律的に分散制御され、電力線以外の配線がいらないという点だ。さらに、知的照明システムはオフィスワーカー各人が照度センサーを持つことで、個人それぞれにあわせた照度・色温度が自動的に調整される機構なども考えられている(現在は未導入)。
次ページ「一歩先を行くフリーアドレス制」に続く