生産や販売、在庫、物流、人事、給与までの社内のあらゆる情報を統合的に管理し、効率的な経営活動を行なうためのERPなどのエンタープライズ・ソリューションの導入がさまざまな業界で進められている。エンジニアとしてスキルアップするためにも最新の動向はおさえておきたいものだ。そこで、企業のエンタープライズ・ソリューション導入のコンサルティングを行なう齋藤滋春さんに、システム開発案件の現状について聞いた。
ガートナー ジャパン株式会社 コンサルティング ディレクター 齋藤滋春さん 日本ブーズ・アレン・アンド・ハミルトン株式会社、株式会社日本総合研究所などにおいて経営コンサルタントとして従事した後、1996年にSAPジャパンに入社。現在はガートナー ジャパン株式会社において、製造業、流通・サービス業を中心に、ERPを中心とするエンタープライズ・ソリューションの導入から運用までのサイクル──戦略・実行計画策定、評価、導入実施、運用管理──に関するコンサルティングに従事している
中堅・中小企業でもERPの導入が進む
企業内のあらゆる情報を一元管理し、効率的に経営活動を行なう経営手法「ERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)」。日常業務で発生する情報を管理し、各部門がそれらのデータを共有することで、意思決定や経営判断を迅速に行なえる。このERPの導入はどのセクターに需要が多いのか。
「ERPを中心とした基幹システムは、売上高1000億円以上の大手企業を中心に導入されています。シェアはSAP(独SAP社のERPソフトウェア)がもっとも高く、日本では製薬や化学、製造業から総合商社などに導入が進んでいます。この動きは年々広がりをみせていて、一昨年あたりからは300億~500億円規模の中堅・中小企業でも導入を検討しているといった話が出始めています」
企業が今ERPを導入する背景には、産業そのものがグローバル化し、産業構造が大きく変化していることにある。ERP導入で共通する開発の特徴は、基幹系システムをスクラッチ開発せず、既存のパッケージをベースに作っていくというものだ。そのため、SIベンダーおよびパッケージの評価を行なっている齋藤さんのもとには、「システムが統一されていないのでどうしたらいいか」「今、導入しているシステムをアップグレードしたい」といった企業からの相談が寄せられるという。
「ERPというカテゴリーの中で、SAP、オラクル、オービックなど、今はさまざまなパッケージが出ています。私たちのERP導入コンサルティングでは、パッケージを導入する際、どれがその企業に適しているのかについて調査を行なったり、SIベンダーの選択を行ないます」
ユーザー企業の担当者が直接SIベンダーとやり取りした場合、費用がかさんでしまい、結果として導入に踏み切れないといったことが現場では起こっていると齋藤さんは語る。さらに、ユーザー企業の担当者とSIベンダーとのコミュニケーションが適切に行なわれておらず、口約束やあいまいな発注により開発現場が混乱し、納期の遅れやシステム障害がたびたび発生しているそうだ。そのためERPパッケージなどの新たなシステムの導入に際し、ガートナー ジャパンのようなITアドバイザリ企業の中立・公正な第三者の視点からのアドバイスが必要になるというわけだ。
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