3200万ドルという野心的な目標を掲げてスタートしたCanonicalの「Ubuntu Edge」クラウドソーシングプロジェクト。その目標金額やUbuntuの知名度からも話題をさらった。初日限定の600ドル/5000人の枠が24時間以内に売り切れるなど、スタートは好調だったが、その後出資は落ち込み、開始後10日を過ぎてやっと目標額の25%に達した段階だ。残りは20日を切っており、見通しは険しい。
クラウドソーシングで端末のリリースを目指す「Ubuntu Edge」
超ハイエンドなスマホを来年にリリースする!?
Canonicalのモバイル戦略
Ubuntu EdgeはCanonicalのUbuntuをベースとしたハイエンドのスマートフォンだ。Androidとのデュアルブートのほか、HDMI端子で接続するとUbuntu Desktopになるという“コンバージェンス”端末でもある。
ストレージは128GB、RAMは4GBなどかなりの高スペック。それもそのはずで、Canonicalは車で言うならUbuntu Edgeは「フォーミュラ1」と位置づけている。Ubuntu Edgeのクラウドソーシングに選んだIndiegogoのプロジェクトのページで、iPhone 5/GALAXY S4と比較したスペック表を掲示している。高スペックなスマートフォンを低ボリュームで作成するというのが今回のプロジェクトの趣旨となる。
Ubuntu EdgeまでのCanonicalのモバイル分野における動きをまとめてみよう。Canonicalは2012年のMobile World Congress(MWC)でAndroidスマホでUbuntuを動かす「Ubuntu for Android」の試作をデモ、2013年のMWCでは小さい画面でタッチやスワイプ操作が可能なUbuntu UIを持つ「Ubuntu Touch」を発表し、モバイル分野進出に向けた宣戦布告を行った。
その後Canonicalは6月にCarrier Advisory Group(CAG)を結成、8月初めに加わったT-Mobile USAを合わせると13社のキャリアが参加を正式に表明している。CAGはUbutnuモバイル戦略の方向性に影響を与えることができるキャリア団体で、Ubuntuとは独立したグループとなりUbuntuモバイルに関する仕様などの情報を優先的に受け取ることができるというものだ。UbuntuモバイルのローンチパートナーとなってUbuntuを出荷する権利を得るチャンスもあるという。
Ubuntu Edgeはこれとは別に、Canonicalが独自にハードウェア仕様などを設計して革新的な端末を製造しようという取り組みである。IndiegogoでCanonicalは、大量生産されていないコンポーネントを使いたいこと、競争力のある価格で製品を提供するには、製造コストを下げるのに充分な台数を製造する必要があることから3200万ドルが妥当なラインだと判断した、と説明している。
このペースでは3200万ドル調達は無理?
今回の調達キャンペーンでは出資者は出資する金額に応じてUbuntu Edgeの購入権を得られる。当初、初日限定で600ドルでUbuntu Edge1台分の購入権を5000台分用意したところ、すぐに完売となった。その後は同条件で830ドルとなったが、Canonicalはすぐに金額システムを変更し、スライド方式を導入した。
新しいシステムでは、Ubuntu Edge1台分の購入権が付いた625ドルを1250台、その後675ドル、725ドルと、それぞれ1250台に達すると50ドルずつ価格が上がるというものだ。775ドルが1250台に達すると780ドル(4500台)、790ドル(3000台)となり、830ドルは無制限となっている。本稿執筆時では775ドルは「完売」で、Ubuntu Edge1台の購入権は780ドルからとなっている。
Canonicalはキャンペーンを盛り上げるべく、創業者のMark Shuttleworth氏がRedditのAMA(Ask Me Anything、オンラインのチャット形式でユーザーからの質問に応える)に登場したり、紹介コンテストを設けるなどのマーケティング活動を行っているが、Ubuntu Edgeへの出資金額は伸び悩んでいる。
Ubuntu Edgeのファンによるウェブサイト「Ubuntu Edge.info」は、30日で3200万ドルに達成するために一日に必要な出資金額の表を作成している。それによると、日単位で必要金額を上回ったのは、開始した7月23日から28日頃まで。その後は必要額に達しておらず、このペースでいくと3200万ドルに達するのは厳しくなってきた。
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