今回のロケ地巡りは「氷菓」の飛騨高山!
皆さんは雛祭りというと、何月何日に行なわれる行事だと思うだろうか? そう、一般的には3月3日だ。しかし日本全国を見渡してみると、4月3日、あるいは4月の中旬から下旬に行なわれるという所も、意外に多いことがわかる。
明治の頃、日本の暦はそれまでの旧暦から、約一ヵ月ほど前にずれた新暦(グレゴリオ暦)が採用された。それによって雛祭りも新暦にあわせて一ヵ月前倒しされることになったが、この時期の北海道や東北、北陸といった地域では雪に閉ざされていることが多い。そこでこれらの地域では、従来どおり旧暦3月3日である4月の中旬、もしくは4月3日に開かれることになったのだ。
今回旅する高山も、雛祭りを4月3日に行なう地域のひとつ。高山市の南にある飛騨一ノ宮、そこの飛騨一宮水無神社では、毎年この日に女性たちがお内裏様やお雛様に扮して町内を練り歩くという「飛騨生きびな祭」が開催される。そして今年の生きびな祭では、TVアニメ「氷菓」とのコラボレーションで開かれるという。
TVアニメ「氷菓」は、米澤穂信の人気学園ミステリー「古典部シリーズ」を原作とする作品で、2012年の4月から9月にかけて全国ネットで放送された。作中での舞台は「神山市」となっているが、アニメの舞台は原作者の米澤氏が育った高山がモデルとなっている。風景描写に定評のある京都アニメーションの製作で、高山の情景を全編に渡って美しく精緻に描き出していた。もちろんシナリオも満点で、原作ファンだった筆者も毎週ワクテカしながら観ていたものだ。
アニメに登場した舞台を旅人の視点でめぐる特集「聖地巡礼ツアー」。今回は「氷菓」とのコラボで注目を集めた飛騨生きびな祭の模様と、早春の飛騨高山の情景をレポートしてみよう。
飛騨生きびな祭は、終戦から間もなくの1952年から始まった飛騨一宮水無神社の年中行事。この地方で盛んだった養蚕と農業の繁栄、それに女性たちの幸福を願って、飛騨一円から選ばれた未婚の女性9人が内裏や雛、官女などの装束に扮して町を練り歩く。どうやら穢れ払いの意味合いもあるようで、行列後に彼女たちは拝殿に入り、その身に受けた穢れを払い清められる。平安絵巻さながらの美しい雛行列は、飛騨に遅い春を告げる風物詩となっているのだ。
このお祭は「氷菓」の最終話「遠まわりする雛」の中でも描かれていて、ヒロイン・千反田えるに行列の傘差し役を頼まれた主人公の折木奉太郎が、ちょっとした謎解きもからめつつ、美しい雛となった彼女の姿に複雑な心境を垣間見せるという、最終話にして屈指の名シナリオが目を奪うような情景の中で展開された。それ以来筆者は、このお話のモデルになったという実在の生きびな祭を見てみたいと思うようになった。
4月3日。この日は全国的に朝から雨模様だった。飛騨生きびな祭は、雨天だと行列が街に出ることはなく、飛騨一宮水無神社の境内でお披露目をするだけになってしまう。生きびな行列が始まる午後1時までに雨が上がってくれることを期待しつつ、それまでは神社周辺の「氷菓」登場スポットを巡ってみた。
なお登場スポット特定には、今回もネットで公開されているファンサイトからの情報のほか、高山市が発行している巡礼マップなどを大いに参考にさせてもらった。この場を借りてお礼申し上げます。
最終話の重要なキーとなる狂い咲き桜のモデルとされるのが、飛騨一ノ宮駅の西側すぐにある臥龍桜。飛騨地方の桜の開花は4月下旬頃で、劇中でも語られる通り生きびな祭の頃にはまだ蕾が膨らむ程度。この日はこちらでも「氷菓」コラボイベントが行なわれていた
(C)米澤穂信・角川書店/神山高校古典部OB会
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