世界のスマートフォン市場でのAppleとSamsungの2強による独占状態がますます強まっている。端末はどれも似たようなデザインになり、AndroidはPCでいうところのWindowsになった。今後、携帯電話業界はどう進展するのか。メーカーとキャリアの両面から切り込んだアナリストの話を聞く機会があったので、今回紹介したい。
Apple、Samsung、HTC以外のスマホメーカーは
実はどこも赤字
Arete社のRichard Kramer氏が、11月に米サンフランシスコで開催された「Open Mobile Summit 2012」で、スマートフォン市場の現状について講演した。Kramer氏は1人で米国、欧州、アジアの全市場をみており、Areteは数少ないベンダー中立(金銭関係がない)の調査会社だという。
注意深く各社の業績報告に目を通していれば明白な事実だが、まとめて突きつけられるとあらためて驚かされる。
Samsung1社が2012年の1~9月に売り上げた金額は、3位以下の主要ベンダー(HTC、Nokia、LG、Motorola、ソニーモバイル、ZTE、Huawei、RIM)8社の合計を上回っているという。これはスマートフォンだけでもそうなの同時に、携帯電話全体でもそうだ。過去9ヵ月間、Samsungはスマートフォンで480億ドルを売上げたのに対し、8社の売上げは合計370億ドルという。
さらに注目すべきが収益だ。この期間、Samsungの利益率は20%(もっともAppleの44%にはかなわないが)。ちなみにHTCの8%を除くと、残りのメーカーはすべて赤字である。つまり、作れば作るほど赤字が出るが、投入しないわけにはいかないというのが、多くのベンダーにとってのスマートフォンのようだ。
NokiaとRIM以外はほとんどがAndroidを利用している。Androidはライセンス料がないことが大きな魅力だが、利益からみても市場シェアからみても、Android端末でおいしい思いをしているのはSamsungのみといえる。AppleとSamsungの寡占状態は、今後さらに進むとKramer氏は予想する。
Kramer氏は「スマートフォンはコモディティー市場となった」と述べる。SamsungはPCやTVなどの家電を通じてコモディティー市場を熟知している。ほとんどの市場で携帯電話の販売はキャリアを介さなければならないという違いはあっても、消費者のマインドシェアを作り、キャリアを販売チャネルとして上手に利用し、同時に「GALAXY Note」に代表される製品バリエーションを増やすなどの素早い展開は見事といえるだろう。
先にStrategy Analyticsが発表したレポートでは、Samsungの「GALAXY S II」は同社が追跡しているすべてのキャリアと小売店で販売されていたと報告している。またKramer氏のスピーチでは、Samsungが積極的にキャリアとキャンペーンを行う例も紹介された。これについては、後半で再度触れたい。
Kramer氏はどの端末も黒く、長方形で平たく、画面とわずかなボタンのみというスマートフォンのデザイン面についても皮肉った。スライドではAndy Worholの有名なスープ缶を並べた作品「32 Campbell's Soup Cans」とソニーモバイルがここ最近発表した「Xperia」の各機種を並べてみせた。スマートフォンは成長市場ではあるが、アメリカで50%、欧州で40%まで普及した。そして、この普及率はそのうち頭打ちになる。そのとき差別化はどう図ればよいのか……「ユーザー体験」とKramer氏は言う。
NokiaはiPhone登場前に数年続いた黄金時代、サービスに拡大を図った。地図、ウェブサービス、広告、法人などに乗り出したが、Nokiaはハードウェアの会社だったし、すばらしいハードウェアを誇っていた。
Kramer氏もメーカーの問題として、「DNAがハードウェアであること」と指摘した。Samsungはおそらくこの問題に気がついているように見える。5月に音楽サービス「Music Hub」を発表した際、「サービスを強化したい」と語っていた。もっともこれもソニーもたどってきた道だ。Samsungがソニーと同じ轍を踏むのか、ハードウェアからサービスへの転身(拡大)するベンダーとなれるのか……。
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