突然だが、NHK Eテレ(NHK教育テレビジョン)の長寿番組「おはなしのくに」をご存知だろうか。テレビでありながら、有名人が子供向けに物語の「語り聞かせ」をする番組である。
ああいった「語り聞かせ」が中国では「評書」(発音はピンシュー)というジャンルでずっと身近なところに存在する。評書は大昔から話の語り伝えとしてあるが、近年でも消えずに残っているわけだ。中国では声優ではなく、語り部のプロが今もなお健在なのである。
MP3プレーヤーが低価格化し、怪しい製品が続々と登場(MP3工場の集まる中国広東省で見つけた、そっくりものに画像多数!)すると、山寨機(ノンブランドケータイ)も含め、音楽再生機能付きの携帯電話が登場するまで、都市では多くの若者がMP3プレーヤーを携えた。
当時中国人の友人宅にお邪魔しては、MP3化した音楽ファイルをデスクトップPCで聞くことがよくあったし、インターネットカフェに夜通し潜入したときも、利用者らは人気の音楽を聴いていた。だが「MP3=音楽」だけではなかった。
ラジオを流しっぱなしにするタクシーは多いが、思えばラジオではなく物語を淡々と読む「語り聞かせ」を車内で流すタクシーに結構乗った記憶がある。夏の夜に怪談話を流すタクシーもあった。
中国人に話を聞いてみると、20年以上前から書店で評書コーナーがあり、カセットテープやCDで売られていたとのこと。また「おはなしのくに」同様、学校で評書を流すこともしばしばあったそうだ。
現在は中国最大のオンラインショッピングサイト「淘宝網」(taobao)で「評書」をキーに検索してみれば、多数のCDが確認できるほか、一部の図書館では多数のCDを用意している。
PCやスマートフォンやインターネットが普及している中国でも、中には視力をキープしたいからデジタル製品に触れないようにする人もいれば、目が不自由な人もいる。そうした人々は好んで評書を購入したりダウンロードしたりして聞く。
また、通勤電車やバスに揺られる人や、運転中など本が読めない状態の人にも評書は人気で、購入したりダウンロードしたコンテンツをスマートフォンや携帯電話にコピーして聞いている。
電子ブックリーダーをはじめ、最初からテキストコンテンツとは別に評書の音声コンテンツをバンドルしたデジタル製品も多い。
テキストを音声化する「TTS」(Text To Speech )ソフトは知る人ぞ知るソフトで、出る度にベンダーは不憫かな、海賊版が登場しては注目を集めている。さらにはMP3プレーヤーではなく「听書機」という、TTS機能を内蔵して評書に特化したプレーヤーも登場している。
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