【今週の1枚】今回は12月9日に原宿のカフェ・サンシャインスタジオで開催された公開収録対談の内容をお届けする
昨年末に続いて(関連記事)、ITジャーナリストの林信行さんと僕・松村太郎との対談から、Mac/iPhone/ソーシャルメディアの2009年と2010年について考えていきたいと思う。
2007年12月にスタートした「NOBI-TARO PODCAST」の公開収録も3年目。今回は原宿にあるカフェ、サンシャインスタジオで展開されている月間トークイベントシリーズ「MAGNETICS」の中で行なった。まさに人や場所の「磁場」にフォーカスを当てたイベントシリーズだが、まず林さんと僕の身に起きた最大の出来事から話が始まった。
磁場としてのソーシャルメディア
18万を超えるフォロワーを抱える、本連載筆者の松村さん。松村さんのフォロワー数もそうだが、今年の半ばにTwitterは1つの臨界点を突破した
松村 このPodcastはMacやiPhoneをテーマに2年前にスタートして3年目を迎えます。しかしながら今年のインパクトは違うところにありました。少し広くウェブ、カルチャーに目を向けると、2人にとって大きい出来事はTwitter。nobiさんと僕を合わせると約32万人のフォロワーを抱えていることになります(12月9日現在)。
ここにいる皆さんを合わせると更に大きな数に膨らみます。もともと始めたのは2007年4月頃で、100人程度のフォロワー数が続いてきましたが、2009年6月の段階は数千単位になり、オススメユーザーに入ってからは1日に約1000人ずつ増えています。
林 Twitter活用は日本でブレイクを迎える以前からトライしてきました。Microsoft Mactopiaというウェブ連載で、「Twitterのススメ」という記事を書いて、紙面とTwitterのフィードバックを連動させる企画をスタートさせています。
現在成功している企業は、必ずユーザーからのフィードバックを大切にしています。会社の中の会議室、、たかだか数人で出せるアイディアは限られている一方で、消費者は数々のメーカーの製品をウェブで比較して選んでいるため、会議室の中の議論以上に経験や見識が深い人も多い。これからの時代は、フィードバックをどれだけ取り入れるかは非常に大切なのです。だから私の連載でも読者のフィードバックを取り入れ始めました。
松村 今まで、記事はプロジェクション。書いて世の中に問う、と言うスタイルだった。フィードバックが得られないか、そこまでのタイムラグが非常に長かったように思います。しかし、リアルタイムのメディアでの情報発信は、フィードバックのスピードもコミュニケーションも、根本的に違いますね。
林 雑誌のアドバイザーをやっているときにも同じことを感じていました。毎月読者カードはたくさん送られてきて、毎回目を通すんですが、フィードバックのチャンスは1度しかない。それに対してウェブのメディアとソーシャルメディアを組み合わせれば、記事を出した瞬間に、フィードバックが得られる。どの記事が人気で、どの記事はほとんど読まれていないかがすぐにわかるのです。読まれる傾向の記事ばかりを追い求めると、ポピュリズムに走る懸念はありますが、いずれにしてもメディアの進化のスピードは非常に速くなっていくんじゃないかと思います
松村 とにかく早く情報を出し続ければよいか?という疑問もあります。編集というパワーに対して、もう一度見直すタイミングが来ると思っています。Twitterの中継は140文字単位で編集されていますが、そこから先の編集作業がまだ抜け落ちているのではないか、と。
林 波があると思いますね。今はリアルタイム性を愉しむ時期だけれど、編集を愉しむ時期もこれから来るのではないだろうか。すぐにぴたっと均衡点に行き着くわけではないので。ただコンテンツはマイクロ化されていく傾向は今後も進むと思います。
多摩大学の公文俊平先生は「140文字のつぶやきはメッセージの分子のようだ」と表現していました。そしてタイムラインは、非常に高濃度の分子が詰まっているようなもの。自分が気に入っている人のつぶやきが流れてくるのは、iTunesで自分の好きな曲しか入っていないのと同じような状態。しかも自分に近い、今の情報が流れてくるんです。
松村 情報の調合を手軽にできるようになってきた、と捉えるとすれば、先ほど話題になっていた編集権がカジュアルにユーザーの手に渡った、と言うことになるのかも知れないですね。
そのタイムラインに、事業仕分けを行なっていた政治家の発言が流れてきて、一般のユーザーがリプライしていて。政治家を批判しているユーザーですら「政治家に直接意見を届ける初めての体験をした」と満足感ある経験をしていました。プライベートだけでない、ソーシャルな情報の調合がブログ以来再び現れているようです。
林 Twitterの弊害は、久しぶりに会ったり初めて会った人も、久しぶり、初めて、と言う感覚がしないことですね。前から知り合いだったような感覚になってしまって、つい会話がため口になってしまったり。礼儀が少し薄れたというか、フランクになったというか。これまでオーラがあった有名人からオーラが取れてしまうこともあるかも知れないけれど、まだ良い面が続きそうな気がします。
この連載の記事
-
第100回
スマホ
ケータイの“ミクロな魅力”とは、なんだったのか? -
第98回
スマホ
写真で振り返るケータイ10のミクロなシーン -
第97回
スマホ
ケータイが支える、マイクロ化と遍在化するメディア -
第96回
スマホ
ノマドワークのインフラをどう整えるか? -
第95回
スマホ
冬春モデル発表会で見えた、本当に欲しいケータイ -
第94回
スマホ
デザインから考える、ケータイのこれから -
第93回
スマホ
次の自動車社会とケータイとの関係 -
第92回
スマホ
モバイルアプリを実際に作るにあたっての考察 -
第91回
スマホ
楽しい使い方は現在模索中の「セカイカメラ」 -
第90回
スマホ
iPhoneと過ごしたNYとメキシコの旅でわかったこと - この連載の一覧へ